top of page
執筆者の写真NISHIO KEI

「企図する因果パス」の描画

1.はじめに

生成AIの助けを借りて、知財ガバナンス研究会の報告書にかかれている「企図する因果パス」を作成しました。


2.因果パスの作成まで

この論文を読んで、GPT-4ってすごいなーと改めて思いました。CoT(Chain of Thought)を踏んで実行させれば、企業の将来の収益の予測を、人間と同等にできる、という内容。


LLMの予測は、その学習メモリに起因するものではない。その代わりに、LLMは企業の将来の業績について有用な物語的洞察を生成することがわかった。最後に、GPTの予測に基づく我々の取引戦略は、他のモデルに基づく戦略よりも高いシャープレシオとアルファをもたらす。これらを総合すると、我々の結果は、LLMが意思決定において中心的な役割を果たす可能性を示唆している。

  • 中身を読んでみると、生成AIが(企業名等は伏せた状態で財務諸表のデータのみから)有用なナラティブを作り出せる、部分が興味深かったです。


  • 読んでいるうちに、そういえば知財ガバナンス研究会の報告書でも、企業と投資家等の思考構造のギャップから始めて、企業価値を顕在化する「コミュニケーション・フレームワーク」の「ストーリー」「企図する因果パス」「逆ROICツリー」というのがあったなと思い出しました。

  • その中でも気になったのが「企図する因果パス」というもので、こう書かれています。

企図する因果パスとは、知財・無形資産投資が、最終的にROIC(資本効率)、PER(成長期待)といった アウトカムにつながるように、価値創造プロセスの中で、「高利益率である製品・サービスの競争力・差別 化要因となる知財・無形資産が他社となぜどのように異なり、どのような時間軸で持続可能で競争優 位なビジネスモデルになるのか」といった粒度での企図する関係性を示すものである 企図する因果パスに必要なファクターやトラックレコード等を適宜活用し、その実現度を説明することが、 企業価値の顕在化等に向けて有効である

例えばキーエンス社の「企図する因果パス」は下図(上記の報告書資料参照)。 




3.実行

  • 早速、知的財産報告書、統合報告書、有価証券報告書を投入してやってみよう、ということで、100万トークン(preview版は200万トークン)まで処理してくれるgemini-1.5-proで実施しました。たくさん書類をアップロードしても飲み込んでくれるので、チャンクとかRAGとか苦労せずに済んですごいありがたいです。

  • 統合報告書+知的財産報告書+有価証券報告書を全部入れて26万トークンでも大丈夫!↓


  • 知的財産報告書の検索トップで出た旭化成の事例で作成してみました。

  • 実行するのはGoolgeのAI Studio知的財産報告書と統合報告書の2023年版をアップロード

  • 上記のキーエンスの「企図する因果パス」を、few shot用にgraphvizで再現して投入します。 Instructionsはこんな感じです↓


System Instructions

あなたは企業アナリストです。

以下の制約条件と入力文をもとに最高の収益ストーリーを出力してください。

以下のステップをたどりながら、分析対象の企業の特許や商標といった知的財産がどのように企業収益に結びつくかのストーリーを説明し、可視化してください。

# 制約条件:
・制約1:以下のステップを必ず実行してください。
STEP1:自社の現状のビジネスモデルと強みとなる知財・無形資産の把握・分析:
現状のビジネスモデルを検証し、知財・無形資産が競争力や差別化の源泉となり、価値創造やキャッシュフロー創出に繋がるかを把握・分析する。

STEP2: 知財・無形資産を活用した持続的成長に繋がるビジネスモデルの検討:
自社にとって重要なメガトレンドを特定し、自社の価値観や価値創造の方針を踏まえたビジネスモデルを検討する。その中で、知財・無形資産が果たす機能・役割を明確化する。

STEP3: 競争優位を支える知財・無形資産の維持・強化に向けた戦略の構築:
競争優位を支える知財・無形資産の維持・強化に向け、足らざる知財・無形資産の創出・取得方法を含む、経営資源の配分や事業ポートフォリオを見直す戦略を構築する。

STEP4:ストーリーの説明
STEP1〜3を踏まえて、企業の事業ポートフォリオにおける現在の位置付け(As Is)から、どのようなシナリオで、目指すべき将来の姿(ToBe)に到達させるか、そのために、どのように知財・無形資産投資戦略を改革すべきかという「ストーリー」を構築する。

・制約2:
因果パスの説明
STEP1-STEP4で構築したストーリーを踏まえて、自社の知財・無形資産(既存のもの・新たに獲得しようとするもの)を、今後新たに構築又は再構築しようとするビジネスモデルの強みにどのようにつなげようとしているかを明確に示す「企図する因果パス」を出力してください。因果パスはgraphviz形式で出力してください。

制約3:
「企図する因果パス」は、下記のように「経営方針」「顧客ニーズ」「価値創造プロセス」「成果」の大枠からなるgraphviz(dot)形式で出力してください。

digraph ValueCreationProcess {
    rankdir=LR;
    node [shape=box, style=filled, color=lightblue];
    subgraph cluster_0 {
        label = "経営方針";
        color = red;
        style = filled;
        A [label="会社を永続させる\n- 最小の資本と人で最大の付加価値を上げる"];
    }
    subgraph cluster_01 {
        label = "顧客ニーズ\n付加価値の創造";
        color = green;
        style = filled;
        B1 [label="潜在的なニーズを捉えた商品開発・課題解決"];
        B2 [label="高品質の製品を量産する体制"];
        B3 [label="迅速な出荷体制"]
    }
    B1 -> E;
    B1 -> F;
    B2 -> E;
    B2 -> F;
    subgraph cluster_1 {
        label = "価値創造プロセス";
        color = blue;
        style = filled;
        D [label="ビジネスモデル\n(知財・無形資産の創造・活用)"];
        E [label="経験豊富な人材"];
        F [label="徹底した顧客データの蓄積"];
        G [label="競合との差別化"];
        H [label="顧客満足度向上"];
        O [label="標準化"];
        P [label="直販体制"];
        Q [label="ファブレス生産"];
        R [label="効率的な在庫管理"];
        D -> E;
        D -> F;
        E -> G;
        F -> G;
        G -> H;
        O -> P;
        F -> O;
        F -> H;
        Q -> H;
        R -> H;      
    }
    subgraph cluster_2 {
        label = "成果";
        color = lightgrey;
        style = filled;
        J1 [label="収益性向上\n社会貢献"]
        J [label="顧客価値の創造"];
        K [label="市場シェア拡大"];
        L [label="売上高向上"];
        M [label="利益率向上\n(原価改善)"];
        N [label="企業価値向上"];
        H -> J;
        H -> K;
        K -> L;
        L -> M;
        M -> N;
        G -> J;
        H -> J;          
    }   

    A -> D;
}

 


  • 出力結果(graphviz onlineで描画)はこんな感じです。顧客ニーズがシーズっぽく出てしまっているのと成果部分がちょっと大雑把な気がしますが、価値創造プロセスは具体的に出してくれました。

解説:

この因果パス図は、旭化成グループの知的財産戦略が、具体的な製品や技術にどのように適用され、収益に結びついているかを示しています。

  • 顧客ニーズ: 顧客は、高機能・高品質、持続可能性、新たな価値といった多様なニーズを持っています。旭化成グループは、これらのニーズに対応する製品・サービスを提供することで、顧客満足度を高め、収益向上を目指しています。

  • 価値創造プロセス: 旭化成グループは、「技術」「人」「事業」の3つの側面で「つながり」を促進することで、顧客ニーズに対応する価値を創造します。例えば、コア技術と新技術を融合させて水電解システムを開発したり、データ分析・AIを活用してスマート電解槽を開発したりしています。また、人材レコメンドシステムや高度専門職制度を通じて人材の「つながり」を強化し、住宅事業の海外展開やオープンイノベーションを通じて事業の「つながり」を強化しています。

  • 成果: 価値創造プロセスを通じて、新事業創出、既存事業強化、社会課題解決といった成果が生まれます。これらの成果は、収益向上、顧客満足度向上、企業価値向上、持続可能な社会への貢献といった最終的な成果に繋がります。

具体的な製品・技術例:

  • ヘーベルハウス: 高機能・高品質な住宅として、顧客満足度向上と収益向上に貢献しています。

  • ハイポア™: 高性能なリチウムイオン電池用セパレータとして、電気自動車市場の拡大に貢献し、収益向上に繋がっています。

  • パイメル™: 高性能な感光性ポリイミドとして、半導体製造プロセスの高度化に貢献し、収益向上に繋がっています。

  • アルカリ水電解システム: 再生可能エネルギーから水素を製造するシステムとして、脱炭素社会の実現に貢献し、新たな事業機会を創出しています。

  • CO2分離・回収技術: CO2排出量削減に貢献する技術として、環境問題への取り組みを強化し、企業価値向上に繋がっています。

  • スマート電解槽: データ分析・AIを活用した電解槽として、生産効率向上と環境負荷低減に貢献し、既存事業の強化に繋がっています。

  • リチウムイオンキャパシタ: 高出力・長寿命な蓄電デバイスとして、新たなエネルギー貯蔵ソリューションを提供し、新事業創出に繋がっています。

  • バイオ医薬品CDMO: バイオ医薬品の開発・製造受託サービスとして、医薬品開発の効率化に貢献し、新たな事業機会を創出しています。

旭化成グループは、これらの製品・技術を通じて、顧客ニーズに対応する価値を創造し、持続可能な成長を実現しようとしています。

 


  • ChatGPT(GPT-4)にも同じ投げ方で1製品から具体例を出してもらうとこんな感じに。これも成果以外は結構いいのではと思いました。



 


  • 試し:検索2位のコニカミノルタでも。知財が抽象的にまとまってしまってるようですが、価値創造プロセスの最後の段落はよさそうです。

考察

コニカミノルタは、事業ポートフォリオの再構築、構造改革、知財・無形資産戦略を三位一体で推進することで、収益力の回復と持続的な成長を目指しています。特に、コア技術とAI/IoT技術を融合した「見えないものをみえる化する技術」は、社会課題解決に貢献し、新たな収益源となる可能性を秘めています。

4.その他

  • few shotのgraphvizデータをもう少し作りこんで指示をすれば、いい感じに出してくれそうです。特に成果部分はもうちょっと詳細にしたいです。

閲覧数:316回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page