geminiで弁理士試験に合格できるのか?
- NISHIO KEI
- 4月14日
- 読了時間: 13分
1.はじめに
・OpenAI o1が2025年東大文系入試を余裕で突破という記事があったので、そんなに余裕なのか〜すごいなという気持ちから、geminiの最新版のTihinkingモデルであるgemini-2.5(gemini-2.5-pro-preview-03-25)に弁理士一次試験(マークシート式)を解いてもらいました。
・合格点は大体6割(36点)ですが、いかに。
2.条件
・令和5年の2次試験(短答式)を利用
・Grouding(条文情報や青本の記載をベースに回答)は使用せず(※ソースコードの通り)
・ウェブ検索は使用せず(※ソースコードの通り)
・プロンプト
あなたは、特許法、実用新案法、意匠法、商標法などの知的財産に関する日本国の法律に習熟したAIです。以下の質問に対して、理由と共に回答してください。
回答は下記のようなjson形式にしてください。####は例示です{"answer":"###","reason":"####"}
・コード
#@title 本文
import base64
import os
from google import genai
from google.genai import types
from google.colab import userdata
GEMINI_API_KEY = userdata.get('GEMINI_API_KEY')
def generate(question):
client = genai.Client(
api_key=GEMINI_API_KEY,
)
model = "gemini-2.5-pro-preview-03-25"
contents = [
types.Content(
role="user",
parts=[
types.Part.from_text(text=question),
],
),
]
generate_content_config = types.GenerateContentConfig(
temperature=0.1,
max_output_tokens=4196,
response_mime_type="application/json",
system_instruction=[
types.Part.from_text(text="""あなたは、特許法、実用新案法、意匠法、商標法などの知的財産に関する日本国の法律に習熟したAIです。入力される質問に対して、理由と共に回答してください。あなたは、特許法、実用新案法、意匠法、商標法などの知的財産に関する日本国の法律に習熟したAIです。以下の質問に対して、理由と共に回答してください。回答は下記のようなjson形式にしてください。####は例示です{"answer":"###","reason":"####"}"""),
],
)
res = client.models.generate_content(
model=model,
contents=contents,
config=generate_content_config,
)
return res.text
・データフレームは問題文pdfから文字起こして、1行=1問の形式に加工

・さっきの関数をapply
q_df = q_df.with_columns(
pl.col("Q")
.map_elements(generate,return_dtype=pl.String)
.alias("A")
)
・出力
q_df.with_columns(
pl.col("A").str.json_decode().alias("answer")
).with_columns(
pl.col("answer").struct.unnest()
).write_csv("answers.csv")
3.結果
・最高38点で合格!(おめでとう!?)。平均では33点くらいなのであと一歩

・正解した問題と理由などはこちら
・平均の回答時間:19秒くらい=20分くらいで終了
・5回試験の平均点:33.4点
・5回試験の最高点:38点
・5回試験の最低点:28点
4.例
こんな感じで回答してくれます。
●第2問:
特許権についての実施権等に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
1 特許権について専用実施権が設定され、その登録がされている場合、特許権者は、専用実施権者の承諾を得なくとも特許権を移転することができるが、専用実施権者は、特許権者の承諾を得ない限り、専用実施権を移転することができない。
2 特許権者甲は、乙に対してその特許権に関して設定行為で実施の範囲を制限することなく通常実施権を許諾し、その後、丙に対してその特許権に関して設定行為で実施の範囲を制限して専用実施権を設定し、その登録がされたとき、丙は、甲及び乙の両者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定することができる。
3 特許法における通常実施権の規定には、特許法第 35 条第1項に規定する職務発明に係る特許権についての通常実施権及び同法第 79 条に規定する特許権についての先使用による通常実施権については、当該特許権者は当該通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有することは規定されていないが、同法第 79 条の2に規定する特許権の移転の登録前の実施による通常実施権、同法第 80 条に規定する特許権についての無効審判の請求登録前の実施による通常実施権及び同法第 82 条に規定する意匠権の存続期間満了後の特許権についての通常実施権については、当該特許権者は当該通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有することが規定されている。
4 特許庁長官は、自己の特許発明の実施をするための通常実施権を設定すべき旨の裁定をした後に裁定の理由が消滅したときは、職権で裁定を取り消すことができ、裁定の取消しがあったときは、その通常実施権は初めから存在しなかったものとみなされる。
5 甲が所有する特許権に、公共の利益のための通常実施権の設定の裁定により、時期を令和5年1月1日から5年の間とし、対価の額を 10 億円とする通常実施権が設定された。この場合、甲は、その時期及び対価の額の両方についての不服を、その裁定についての行政不服審査法の規定による審査請求における不服の理由とすることができる。
●思考
ユーザーは特許権の実施権等に関する記述について、正しいものを一つ選ぶよう求めている。各選択肢を特許法の規定に照らして検討する。
選択肢1:専用実施権設定後の特許権移転と専用実施権の移転
特許権の移転: 特許法第98条第1項第1号は、専用実施権が設定されている場合、特許権の移転には専用実施権者の承諾が必要であると規定している。したがって、「専用実施権者の承諾を得なくとも特許権を移転することができる」という部分は誤り。
専用実施権の移転: 特許法第77条第3項は、専用実施権の移転には特許権者の承諾が必要であると規定している(実施の事業とともにする場合、相続その他の一般承継の場合を除く)。したがって、「専用実施権者は、特許権者の承諾を得ない限り、専用実施権を移転することができない」という部分は原則として正しい。
結論: 前半部分が誤りであるため、選択肢1全体としては誤り。
選択肢2:通常実施権設定後の専用実施権設定と質権設定
状況: 甲(特許権者)→乙(通常実施権、範囲制限なし)→丙(専用実施権、範囲制限あり、登録済み)
専用実施権への質権設定: 特許法第95条は、特許権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定することができると規定している。特許法第96条は、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権は、特許権者(専用実施権については特許権者及び専用実施権者)の承諾を得なければ、その実施権の実施をすることができないと規定している。
本選択肢の主張: 丙が専用実施権に質権を設定するには、甲(特許権者)と乙(通常実施権者)の両者の承諾が必要である。
検討: 特許法第96条によれば、専用実施権を目的とする質権について、質権者がその実施権を実施するには「特許権者及び専用実施権者」の承諾が必要である。しかし、これは質権者が実施する場合の話であり、質権を設定すること自体の承諾要件ではない。質権設定自体には、原則として特許権者の承諾は不要である(ただし、専用実施権の移転には特許権者の承諾が必要なため、実質的に質権設定が制限される可能性はあるが、条文上は設定自体の承諾要件はない)。また、通常実施権者(乙)の承諾は、専用実施権への質権設定の要件として規定されていない。
再検討(質権設定の承諾要件): 特許法第77条第4項は、専用実施権は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権を目的として質権を設定することができると規定している(相続その他の一般承継の場合を除く)。したがって、専用実施権に質権を設定するには、特許権者(甲)の承諾が必要である。通常実施権者(乙)の承諾は不要である。
結論: 「甲及び乙の両者の承諾を得た場合に限り」という部分が誤り。特許権者(甲)の承諾のみが必要である。したがって、選択肢2は誤り。
選択肢3:法定通常実施権における対価の規定
職務発明(35条1項): 特許法第35条第4項で「相当の利益」(金銭その他の経済上の利益)を受ける権利が規定されている。選択肢は「相当の対価を受ける権利を有することは規定されていない」としているため、この部分が誤り。
先使用権(79条): 特許法第79条には、対価に関する規定はない。したがって、「当該特許権者は当該通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有することは規定されていない」という部分は正しい。
移転登録前の実施(79条の2): 特許法第79条の2第2項で「相当の対価」を受ける権利が規定されている。選択肢の記述は正しい。
無効審判請求登録前の実施(80条): 特許法第80条第2項で「相当の対価」を受ける権利が規定されている。選択肢の記述は正しい。
意匠権満了後の実施(82条): 特許法第82条第2項で「相当の対価」を受ける権利が規定されている。選択肢の記述は正しい。
結論: 職務発明に関する記述が誤っているため、選択肢3全体としては誤り。
選択肢4:裁定通常実施権の取消しとその効果
裁定の取消し: 特許法第91条の2第1項は、裁定の理由が消滅した場合等に、利害関係人の請求により又は職権で裁定を取り消すことができると規定している。したがって、「職権で裁定を取り消すことができる」という部分は正しい。
取消しの効果: 特許法第91条の2第2項は、「前項の規定による裁定の取消しがあつたときは、通常実施権は、その時から消滅する。」と規定している。「初めから存在しなかったものとみなされる」(遡及効)のではなく、取消しの時から将来に向かって消滅する(将来効)。
結論: 取消しの効果に関する記述が誤っているため、選択肢4全体としては誤り。
選択肢5:公共の利益のための裁定通常実施権と不服申立て
裁定の種類: 公共の利益のための通常実施権設定の裁定(特許法第93条)。
裁定の内容: 時期(令和5年1月1日から5年間)、対価(10億円)。
不服申立て: 特許法第184条の2は、裁定についての行政不服審査法による審査請求においては、対価についての不服をその裁定についての不服の理由とすることができないと規定している。対価に関する不服は、特許法第183条に基づき、訴えをもって裁判所に請求しなければならない。
本選択肢の主張: 時期と対価の両方について、審査請求における不服理由とすることができる。
検討: 特許法第184条の2により、対価については審査請求の不服理由とできない。時期については、裁定の他の要件(例えば、公共の利益の有無、実施の範囲など)と同様に、審査請求の不服理由とすることができると考えられる。
結論: 「対価の額」について審査請求の不服理由とすることができないため、「時期及び対価の額の両方についての不服を、その裁定についての行政不服審査法の規定による審査請求における不服の理由とすることができる」という記述は誤り。
再検討: すべての選択肢が誤りとなった。もう一度各選択肢と関連条文を確認する。
選択肢1: 特許法第98条第1項第1号(特許権移転には専用実施権者の承諾要)、第77条第3項(専用実施権移転には特許権者の承諾要)。やはり誤り。
選択肢2: 特許法第77条第4項(専用実施権への質権設定には特許権者の承諾要)。乙の承諾は不要。やはり誤り。
選択肢3:職務発明(35条):第4項で「相当の利益」を受ける権利。選択肢は「相当の対価」と表現しているが、実質的に金銭的対価を含む。問題文は「相当の対価を受ける権利を有することは規定されていない」としているので、この点が誤り。
先使用権(79条):対価規定なし。正しい。移転登録前の実施(79条の2):第2項で「相当の対価」。正しい。無効審判請求登録前の実施(80条):第2項で「相当の対価」。正しい。
意匠権満了後の実施(82条):第2項で「相当の対価」。正しい。
再評価: 職務発明について「相当の対価」という文言そのものは使われていないが、「相当の利益」には金銭が含まれるため、「対価を受ける権利が規定されていない」は誤り。したがって、選択肢3はやはり誤り。
選択肢4: 特許法第91条の2第1項(職権取消可)、第2項(将来効)。やはり誤り。
選択肢5: 特許法第184条の2(対価は審査請求の不服理由とできない)。やはり誤り。
すべての選択肢が誤りである可能性? 問題文または私の解釈に誤りがないか再確認する
選択肢1: 条文通り。誤り。
選択肢2: 条文通り。誤り。
選択肢3: 職務発明の「相当の利益」と「相当の対価」の表現の違いがポイントか? 特許法第35条は「相当の利益」であり、他の法定通常実施権(79条の2、80条、82条)は「相当の対価」と明確に区別されている。先使用権(79条)は対価規定がない。
選択肢3の記述:「職務発明...については、当該特許権者は当該通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有することは規定されていない」→ これは正しい記述となる。35条は「相当の利益」であり、「相当の対価」ではないから。
選択肢3の記述:「先使用...については、当該特許権者は当該通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有することは規定されていない」→ これは正しい記述。79条に対価規定はない。
選択肢3の記述:「移転登録前の実施...、無効審判請求登録前の実施...及び意匠権存続期間満了後の特許権...については、当該特許権者は当該通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有することが規定されている」→ これも正しい記述(79条の2第2項、80条第2項、82条第2項)。
結論(再々評価): 選択肢3は、職務発明について「相当の対価」という文言が規定されていない点を正確に指摘しており、他の部分も条文通りであるため、正しい記述となる。
選択肢4: 条文通り。誤り。
選択肢5: 条文通り。誤り。
最終確認:
選択肢3が正しいと判断した根拠は、特許法第35条が「相当の利益」と規定し、「相当の対価」とは規定していない点にある。この区別を前提とすれば、選択肢3の記述は正確である。職務発明(35条):対価規定なし(「相当の利益」規定あり)→ 選択肢の記述「相当の対価を受ける権利を有することは規定されていない」は正しい。
先使用権(79条):対価規定なし → 選択肢の記述「相当の対価を受ける権利を有することは規定されていない」は正しい。
79条の2、80条、82条:対価規定あり → 選択肢の記述「相当の対価を受ける権利を有することが規定されている」は正しい。
したがって、選択肢3が正しい。
●回答
回答:各選択肢について、特許法の規定に基づき検討します。
1 誤り。
特許権について専用実施権が設定され、その登録がされている場合、特許権者が特許権を移転するには、専用実施権者の承諾が必要です(特許法第98条第1項第1号)。また、専用実施権者は、実施の事業とともにする場合や相続その他の一般承継の場合を除き、特許権者の承諾を得なければ専用実施権を移転することができません(特許法第77条第3項)。したがって、前半の「専用実施権者の承諾を得なくとも特許権を移転することができる」という部分が誤りです。
2 誤り。
専用実施権者は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権を目的として質権を設定することができます(特許法第77条第4項)。通常実施権者(乙)の承諾は不要です。したがって、「甲及び乙の両者の承諾を得た場合に限り」という部分が誤りです。
3 正しい。
職務発明(特許法第35条第1項): 使用者等は、従業者等がした職務発明について特許を受けたとき等は、その特許権について通常実施権を有します。この場合、特許権者(従業者等)は「相当の利益」(金銭その他の経済上の利益)を受ける権利を有します(同条第4項)。条文上は「相当の対価」ではなく「相当の利益」と規定されているため、「相当の対価を受ける権利を有することは規定されていない」という記述は、文言上は正しいと言えます。先使用権(特許法第79条): 先使用による通常実施権については、特許法上、対価に関する規定はありません。したがって、「相当の対価を受ける権利を有することは規定されていない」という記述は正しいです。移転登録前の実施(特許法第79条の2)、無効審判請求登録前の実施(特許法第80条)、意匠権満了後の実施(特許法第82条): これらの法定通常実施権については、それぞれ特許法第79条の2第2項、第80条第2項、第82条第2項において、特許権者は通常実施権者から「相当の対価」を受ける権利を有することが明確に規定されています。したがって、この部分の記述も正しいです。以上より、選択肢3の記述は全体として正しいと判断されます。
4 誤り。
特許庁長官は、裁定の理由が消滅した場合等には、利害関係人の請求により又は職権で裁定を取り消すことができます(特許法第91条の2第1項)。しかし、裁定の取消しがあったときは、通常実施権はその時(取消しの時)から消滅します(同条第2項)。「初めから存在しなかったものとみなされる」(遡及効)のではなく、将来に向かって効力を失います(将来効)。したがって、取消しの効果に関する記述が誤りです。
5 誤り。
公共の利益のための通常実施権設定の裁定(特許法第93条)を含む、特許法上の裁定についての行政不服審査法による審査請求においては、「対価」についての不服をその裁定についての不服の理由とすることはできません(特許法第184条の2)。対価に関する不服は、別途、訴えをもって裁判所に請求する必要があります(特許法第183条)。したがって、「時期及び対価の額の両方についての不服を、その裁定についての行政不服審査法の規定による審査請求における不服の理由とすることができる」という記述は誤りです。
最終的な答え:正しいものは 3 である。
5.その他
・次は他のモデルで試したり、Grounding(条文情報や青本の記載をベースに回答させる)を試してみようと思います。
・回答が私の先生の回答っぽくて嬉しかったです。ただしもっと楽しい感じとプラスアルファの周辺知識を入れた解説があるともっと先生っぽくなりますが。
・なお私は合格点突破まで3年かかりました。さすがgemini。
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